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グレーゾーンの子どもを育てる母の葛藤──理解されない苦しさと向き合う毎日
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2025.11.27(Thu)
文部科学省が公表した「特別支援教育に関する実態調査」(令和5年)では、
通常学級に在籍しながら、学習面・行動面で著しい困難を示す児童生徒が約8.8%存在すると報告されています。
しかし、そのうち専門機関で診断を受けていない、いわゆる“グレーゾーン”の子どもたちの割合が高いことも指摘されています。
低学年のうちは「元気な子」「ちょっと落ち着きがない」「年齢のせい」と見過ごされやすい一方、高学年に入ると周囲との差が明確になり、
・授業に集中できない
・突発的な行動が目立つ
・叫んでしまう
・感情がコントロールできない
・友人関係のトラブルが増える
など、“本人の努力とは関係のない困りごと”が増えていきます。
その結果、母親だけが苦しさを抱えてしまう構造が生まれ、
学校不適応や不登校へとつながるケースも少なくありません。
グレーゾーンの“見えにくい困難”と母親の孤独
グレーゾーンの子どもは、医療的な診断名がつかない場合も多く、周囲から「支援が必要な子」と認識されにくい現実があります。しかし実際には、知能の凸凹(IQのばらつき)や多動、衝動性、感覚過敏、癇癪、叫んでしまうなど、学校生活に大きな影響を及ぼす特性を抱えていることが少なくありません。これらは“努力不足”や“しつけの問題”で説明できるものではなく、本人にもコントロールが難しい「特性による困難」です。
幼児期から小学校低学年のころは、周囲も「まだ年齢的に落ち着かないだけ」「元気がいい子」と受け止めやすいため、子ども本人も母親も深刻さを実感しにくいものです。しかし、高学年に進むにつれ、協調性や計画性、論理的思考といった力が求められる場面が増え、周囲との“差”が一気に広がっていきます。その瞬間、特性のある子どもたちは、まるで周りから取り残されていくような感覚に直面することがあります。
こうした状況の中で、特別支援学級や通級指導の利用が提案されても、本人が「自分だけ特別扱いされたくない」と拒むことがあります。また、親の側も「うちの子にレッテルを貼られたくない」「まだ普通クラスで頑張れるはず」と葛藤を抱えることがあります。その結果、支援が必要にもかかわらず手が届かないまま、学校生活の負担だけが重なっていくという悪循環に陥ってしまいます。
さらに深刻なのは、周囲から理解されにくいことで、母親が強く追い詰められてしまう点です。先生から「家庭でしっかり見てください」と言われたり、親戚や周囲から「甘やかしすぎ」「ただのワガママじゃないの?」と誤解されることもあります。きょうだいとの関係が崩れたり、子どもが学校に行けない日が増えることで母親の休息がなくなり、日常生活のすべてが負担として重くのしかかってくることもあります。
その結果、母親は「私の育て方が悪かったのかもしれない」と深い罪悪感を抱えやすくなり、子どもの不登校の背景に“家庭の疲弊”が静かに積み重なっていきます。グレーゾーンの子どもは、支援の網からこぼれ落ちやすい分、家庭に強い負担が集中しやすいのです。
学校生活の負担が増すなか、叱責やトラブルが続くと、子どもは「行きたいのに行けない」「行かなきゃいけないのに身体が動かない」という状態に陥ることがあります。こうして行き渋りが続き、欠席日が増え、登校拒否や非登校、五月雨登校といった状態を経て、不登校に至るケースが少なくありません。
グレーゾーンの子どもとその家族が抱える悩みは“見えにくい”ため、周囲から理解されにくいことがあります。しかし、その見えにくさこそが、本人と母親を深く苦しめている大きな要因でもあります。
解決策──支援が届きにくい“グレーゾーン”だからこそ必要なアプローチ
① 子どもの特性の理解(ASD・ADHD・知能の凸凹など)
診断の有無ではなく、「この子が何に困っているのか」という困り感ベースで支援を考える必要があります。
・多動・衝動 → 小刻みの休憩・環境調整
・叫んでしまう → 刺激過多の環境を避ける
・勉強についていけない → 個別の学習ペース
・コミュニケーションの苦手 → 少人数での関わり
特性を理解するだけで、親も学校も“責める姿勢”から“支える姿勢”に変わります。
② 学校・家庭・支援機関の連携
・担任の理
・特別支援コーディネーター
・スクールカウンセラー
・児童発達支援・相談支援専門員
・医療機関
こうした複数の専門家で「一人の子どもを支えるチーム」を作ることで、母親の孤立が緩和されます。
③ 無理に“普通の学校生活”に合わせない
・別室登校
・通級指導教室
・フレックス登校
・ホームエデュケーション(在宅学習)
・オルタナティブ教育
「学校に行くこと」だけがゴールではなく、その子が安心して学べる形を選べるようにすること が大切です。
④ 母親が休める環境を整える
母親のメンタルが限界を迎えると、家庭が子どもにとっても「安心できる場所」でなくなってしまいます。
・一時預かり
・放課後等デイ
・家族支援カウンセリング
・行政の相談窓口
など、「母親を救う支援」が不可欠です。
“グレーゾーンの視点”が広がることで、救われる親子が増えていく
グレーゾーンの子どもたちは、診断がつかない分、支援も理解も届きにくい現実があります。しかし、彼らは“できない”わけではなく、特性ゆえの苦手さに直面しているだけです。そして、その苦しさを最も身近で受け止めているのが母親です。
「甘やかし」「しつけ不足」「親の努力が足りない」などの偏見は、母親を深く傷つけ、子どもをさらに追い込んでしまいます。
文部科学省も「個に応じた学び」「特別支援教育の強化」を進めており、学校に行ける・行けないという二択ではなく、その子にとって安心できる学びを保障することが重視される時代に移行しつつあります。
これからの支援は、
子どもを変えるのではなく、環境を変える
母親が責められない社会にする
グレーゾーンという“見えにくい特性”を理解する
こうした視点が必要です。
“理解されない苦しさ”を抱える親子が、少しでも「ここならわかってもらえる」と感じられる社会へ。そのための小さな一歩が、グレーゾーンの子どもと母親を救う大きな力になります。
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