1. 復帰できたのは突然だった──不登校からの回復が“直線ではない”理由

行政

復帰できたのは突然だった──不登校からの回復が“直線ではない”理由

2025.11.27(Thu)

文部科学省がまとめた最新の調査によると、不登校の子どもたちが相談機関で最も多く訴えているのは「学校生活に対してやる気が出ない等の相談(32.2%)」でした。
続いて、
「不安・抑うつの相談(23.1%)」
「生活リズムの不調の相談(23.0%)」
と続き、心の不調や生活リズムの乱れが、学校に行けなくなる背景として大きく関わっていることが分かります。
(文部科学省「児童生徒の問題行動・不登校等に関する調査」より)

これらのデータは、不登校が単純な拒否や「怠け」ではなく、
心と身体のバランスが崩れた結果として起きる行動であるということを示しています。

そして重要なのは、そこから学校に復帰していくプロセスが、
決して「昨日休んで今日から毎日通える」といった 直線的なものではない という点です。

「ずっと行けなかったのに、ある日突然ふっと行けるようになった」
そんな声が全国の保護者や子どもから聞かれる一方で、その“突然”は決して魔法のように訪れたのではなく、日々の小さな前進と後退が積み重なった結果として生まれたものです。

学校復帰とは「出席日数を戻すこと」ではなく、子どもが再び安心して生きられるリズムを取り戻す過程そのもの。その理解が、回復の全体像を正しく捉える上で欠かせません。

“復帰=ゴール”という誤解とその落とし穴

不登校から学校復帰へ向かう道は、一筋縄ではいきません。以下のような課題がしばしば見られます。

・復帰=出席日数の回復と捉えてしまう
 学校や保護者の中には「学校に行くこと=復帰」「出席日数を戻すこと=成功」と考える傾向があります。しかし、多くの体験談では、出席を増やしてからも「また休んでしまうのでは」という不安や、授業についていけない、友人関係が戻らないという挫折が起きています。
・回復のスピードがひとりひとり違う
 ある子は、数週間で毎日登校できるようになった一方、別の子は数ヶ月・数年かかることがあります。体験談には「長期不登校のあと、1日の登校をきっかけに急に変わった」というケースもあります。
・“一進一退”を経験する
 登校が少し戻ったとき、「大丈夫かもしれない」と思った直後にまた休みがちになる、体調不良が出る、友人関係で躓くということが少なくありません。体験談では「再登校後も何度か行き渋りがあり、それでも続けられた」という報告がされています。
・復帰後も“学び・居場所・人間関係”の調整が必要
 学校に戻った後、授業についていけるか、遅れを取り戻せるか、友人とのギャップをどう埋めるかという新たな課題が出てきます。復帰はゴールではなく、再スタートに近いということを理解する必要があります。

以上より、学校復帰は「直線的に回復する」ものではなく、ゆるやかに・そして時に揺らぎながら進む“プロセス”だという認識が重要です。

回復が“曲線”であることを前提にした支援のあり方

不登校からの復帰プロセスを支えるためには、回復が直線ではないことを前提に、以下の支援が有効です。

① 小さな前進を積み重ねる
 体験談では、「最初は数時間だけ教室に入る」「週に1日だけ」のような段階的参加が成功例として多く挙げられています。
例えば、初日は「放課後の部活見学から」であり、次に「特定の授業だけ出る」、さらに「通常登校に向けて少しずつ出席時間を増やす」という流れです。
親としても「今日は30分だった」「教室に入れただけで十分」と捉え直すことが大切です。

② 支援制度・学びの選択肢を活用する
 学校=毎日通常登校という枠だけでなく、
 - 別室登校
 - フレックス登校
 - オンライン併用学習
 - フリースクール・オルタナティブ教育
 など、子どものペースに応じた多様な選択肢を早期に検討することで、復帰のハードルが下がります。文部科学省も「多様な学びの場の確保」を提唱しています。

③ 家庭・学校・支援機関の連携を継続する
 - 担任・スクールカウンセラー・支援センター・保護者が定期的に情報を共有する。
 - 親が「焦らず見守る」というスタンスを持つことで、子どもも安心します。
 「母親が発想を変えて『今日は教室に近づけた』という成功を一緒に喜んだ」という体験談もあります。

④ 挫折も“前進の一部”ととらえる
 「休んでしまったから失敗だ」と捉えるのではなく、「今日は休んだから次は慣れるために〜」と進む方向を準備することで、再び立ち上がりやすくなります。

これらを通して、“学校復帰=戻るだけ”ではなく、“安心して学び直す・関係を作り直す”という観点から支援を構えることが、長期的な安定を生み出します。

復帰のプロセスを理解することが、子ども・家庭・学校を救う

不登校からの回復は、決して一直線ではありません。
突然「普通に登校できるようになった」と見える裏には、長いトンネルを抜けるような時間、家族・学校・子どもそれぞれの“気づき”“調整”“支援”が積み重なっています。
統計的には、不登校児童生徒数が過去最多を更新しており(34万6,000人) 回復に至る支援のあり方も、ますます多様化が求められています。
未来に向けては、

・子ども自身が「また休んでもいい、でもまたやってみよう」と思える安心環境をつくること
・学びの選択肢を広げ、「学校に行く」「毎日行く」以外も当たり前にあるという認識を社会が持つこと
・回復を“段階的プロセス”と理解し、親も学校も支援も長期的視点で動くこと

が鍵となるでしょう。
“復帰できたのは突然だった”という言葉を聞いたとき、その裏にあった小さな前進を知ることで、今悩んでいる子ども・家庭・学校へ希望と道筋が見えてきます。
回復は応援されて終わるものではなく、「安心できるふるさと」を再び感じられるまで、誰かがそばにいることが大切です。

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