1. 家庭環境の変化と不登校──親の離婚・引っ越しが心に与える影響

行政

家庭環境の変化と不登校──親の離婚・引っ越しが心に与える影響

2025.11.26(Wed)

文部科学省が公表した「令和4年度 児童生徒の問題行動・不登校等調査」によれば、小・中学校における不登校児童生徒数は 299,048人 と過去最多を更新しました。
同調査の中で、不登校の背景として「家庭に係る状況」が 約12% に上ることも示されており、
学校外で起こる環境変化が子どもの心理に影響を与えるケースが一定数存在することがわかります。
(出典:文部科学省「令和4年度 問題行動・不登校等調査」)

もちろん、親の離婚や引っ越しは悪いことではありません。人生の中で起こる出来事には不可抗力のものも多く、家族の事情・生活環境の変化は誰にでも起こり得る自然な出来事です。
ただ、それらの変化が 子どもの視点では“大きな揺れ”として感じられる ことがあり、
不安や戸惑いが増えることで「学校に行く気力が出ない」「生活リズムが乱れる」という状態につながることもあります。

本記事では、家庭環境の変化が子どもの心にどのように影響するのか、
そして「不登校のきっかけ」になりうる背景と向き合うためのヒントを整理します。

不登校が抱える大きな課題──“家庭の変化”が子どもの心に与える揺れ

家庭環境が変わることは、子どもにとって「日常の前提」が大きく動く出来事です。

・親の離婚
・再婚や新しい家族構成
・生活拠点の移動(引っ越し)
・兄弟姉妹の進学・就職
・祖父母との同居・別居

こうした変化は、決して悪いものではなく、むしろ生活を立て直すため・より良い未来のために起きる場合がほとんどです。
ただ、子どもにとっては「環境が変わる」ということ自体が大きなストレスになることがあります。

特に思春期は、安心できる場所や関係性の変化に敏感 で、環境の揺れが「情緒不安定」「眠れない」「学校に行くのが重い」といった負担につながるケースもあります。

また、引っ越しは新しい学校・新しいクラス・新しい価値観への適応を求められ、
友人づくりの難しさから「学校に行きづらい」という感覚が芽生えることがあります。

一方で、親自身も生活の変化で精一杯になり、子どもの小さなSOSに気づきにくくなる場面が出てきます。これが「家庭環境の変化 × 不登校」という課題を複雑にする一因でもあります。

支援の鍵は“安心できるペース”──家庭環境の変化に揺れる子どもへの寄り添い

家庭環境の変化があった場合、
最も重要なのは 子どもが安心できるペースで日常を取り戻せるよう支えること です。
解決というより、負担を和らげるための「環境調整」がポイントになります。

● 1. 子どもの気持ちを丁寧に聞く時間をつくる
「何がつらいのか」「何に戸惑っているのか」は、子ども自身も言語化しづらいことがあります。
短時間でも“話せる場”があるだけで、安心感が違ってきます。

● 2. 学校との連携で“無理をしない登校ペース”を設ける
いきなりフル登校に戻す必要はなく、
特別教室での学習・短時間登校・保健室利用など、
その子にとって負担の少ない“学びの場”を確保することが大切です。

● 3. 新しい環境に慣れるための“時間”を確保する
引っ越し後や離婚後は、生活ルール・距離感・家族構成が変わります。
「慣れようと頑張らなくていい」というメッセージが、子どもに落ち着きを与えます。

● 4. 学校以外の関わりの場を活用する
地域の居場所・学習支援・相談員・フリースクールなど、
“学校の外の安心”が、学校とつながるための橋渡しになる場合があります。

● 5. 親自身もサポートを受けていい
家庭の変化は、親にとっても大きな負担です。
相談窓口・支援機関・学校の相談担当が「親の安心」にも役立ちます。
親が落ち着けると、子どもの不安も自然と減少しやすくなります。

未来を見つめて──変化の中でも“安心できる日常”を取り戻すために

家庭環境の変化は、どの家庭にも起こり得るごく自然な出来事です。
親の離婚や再婚、引っ越し、家族構成の変化――こうした出来事は、
人生のなかでは避けられないことも多く、誰かに非があるわけではありません。
むしろ、より良い生活を選ぶための決断であったり、生活を立て直すための前向きな選択であることもあります。

ただ、そうした変化は、大人が思う以上に子どもにとっては“大きな揺れ”として感じられることがあります。
新しい生活リズムに慣れなければならない、話せる相手が変わる、
家が変わることで落ち着ける場所の感覚が揺らぐ――
そのひとつひとつが、子どもの心に負担として積み重なることがあります。

文部科学省も、不登校支援において「子ども一人ひとりの背景を丁寧に把握すること」 の重要性を繰り返し示しています。
家庭の事情や環境の変化も、その子が今どんな状況に置かれているのかを理解する上で欠かせない視点であり、
一律の支援ではなく、個々の状況に応じた柔らかな関わりの必要性が強調されています。

これからの不登校支援では、「家庭環境が変わったから問題」という捉え方ではなく、
“変化の最中にいる子どもが、どんな瞬間に不安を感じ、どんな場面で安心を失いやすいのか” に目を向ける姿勢が大切になっていきそうです。

引っ越しや離婚といった出来事そのものではなく、その前後の揺らぎや不安に寄り添いながら、
子どもが安心できるペースで日常を取り戻せる環境を整えていく――
そんな関わりが、子どもが再び学校とのつながりを感じられる土台になっていくように思われます。

家庭環境の変化があっても、その子にとって「ここは安心できる」「自分のままでいていい」と感じられる場所があること。
それこそが、不安定な時期を支えていく大切な支柱になるはずです。

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