きょうだい関係が不登校に与える影響──比べられる苦しさと居場所の喪失

行政

きょうだい関係が不登校に与える影響──比べられる苦しさと居場所の喪失

3PV

2025.11.27(Thu)

厚労省の調査では、
「自己肯定感が低い子どもほど、ストレスや不安を抱えやすい」
「家庭内の人間関係が気分の落ち込みに影響する」
などの記述がある。
こうした“心の負担”の背景には、学校の問題だけでなく、家庭内──特に「きょうだい関係」から生まれるプレッシャーが深く影響しているケースもあります。

・なんでもできる兄と比べられる苦しさ
・手のかからない妹の存在がプレッシャーになる
・親の期待が兄弟で偏っている
・きょうだい間で役割を押し付けられてしまう
・“優秀な子”と“問題のある子”という構図がいつのまにか生まれる

こうした経験は、子どもの自己肯定感を揺さぶり、学校生活にも影響を与えることがあります。
きょうだいは味方にもなり得ますが、”比べられる関係によって家が“安心できる場所でなくなる”と、不登校に直結することが少なくありません。

きょうだいとの比較が心を追い詰めるとき

きょうだい関係は、家庭内で最も身近で、そして最も比較されやすい関係です。
その比較が続くことで、子どもの心に大きな負担が積み重なります。

比べられる構造が“居場所の喪失”を生む
「お兄ちゃんはできるのに」「お姉ちゃんは優秀なのに」「弟はもっと素直だよ」
そんな何気ない言葉は、子どもにとって強烈なメッセージになります。
結果として、自分は家族の中で“劣っている側”だと感じる、努力しても認められない気がする
家庭での立場がないように感じる、こうした気持ちが積み重なると、学校でも自信を失い、登校への意欲が下がっていきます。

“優秀な兄弟”の存在がプレッシャーになる
勉強が得意、運動神経がいい、性格が素直といった兄弟がいる場合、
本人は「同じようにできない自分」を強く意識することがあります。
きょうだいが褒められるたび、“自分は褒められない側” というセルフイメージが固定化され、学校での失敗やつまずきがより深い傷になってしまいます。

親の期待の偏りが子どもを苦しめる
知らず知らずのうちに、兄には責任を求める、妹には優しさを求める、できる子には期待をかけすぎる、できない子には厳しく当たる、という“役割の固定”が起きることがあります。

この役割が子どもにとって重荷となり、
学校でも同じように“力を抜けない” “自分らしくいられない”というストレスにつながります。

家庭内の比較を減らし、“個”として尊重する関わりへ

① “比べない”ことを家庭のルールにする
兄弟・姉妹間の比較は、大人に悪気がなくても起きやすいものです。
しかし比較され続けると、子どもは「劣っている」と感じてしまいます。

・「お兄ちゃんは〜」と言わない
・子ども同士を同じ基準で評価しない

この2つだけでも、子どもの安心感は大きく変わります。

② きょうだいそれぞれの“得意・個性”を言葉で認める
誰か一人が万能なわけではありません。
子どもが自分の価値を実感できるよう、具体的に言葉で伝えることが大切です。

「あなたの優しさは家族にとってすごく大きな力だよ」
「あなたのペースでいいよ」
「得意なことは人それぞれだよ」

“比較ではなく承認”が子どもの自己肯定感を取り戻します。

③ 家庭内での“役割の固定”を解除する
長男だから、妹だから、優秀だから――
こうした役割意識が強すぎると、子どもは家でも学校でも肩に力が入ってしまいます。

・責任を背負いすぎている子には負担を減らす
・甘えにくい子には「甘えてもいい」と伝える
・手がかからない子にも意識的に声をかける

役割よりも“ひとりの子ども”として扱うことで、心の負担は軽くなります。

きょうだい関係を「競争の場」ではなく「安心の場」へ

きょうだいは本来、支え合える存在です。
しかし、比較・期待・役割の偏りが重なると、
家庭が安心できる場所ではなく、“自分の価値を測られる場所”になってしまうことがあります。

文部科学省の調査でも、不登校の背景に不安・抑うつが大きく関わっていることが示されており、
家庭内での比較は子どもの心を大きく傷つける要因になり得ます。

これから必要なのは、

・子どもを「きょうだいの誰か」と比較しない
・ひとりひとりのペースや個性を尊重する
・家庭を“安心できる居場所”にする

というシンプルでありながら大きな変化です。

きょうだいの存在がプレッシャーではなく、
互いにとっての“心の安全基地”となるような家庭を育んでいくことが、
不登校支援の大切な一歩になるのではないでしょうか。