1. 学校のルールや集団行動に馴染めない子どもたち──個性と規則のギャップ

行政

学校のルールや集団行動に馴染めない子どもたち──個性と規則のギャップ

2025.11.26(Wed)

近年、文部科学省の「令和4年度 児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査」によれば、全国の小・中学校で「不登校」とされた児童生徒数は約 29万9千人 に及び、その中で「学校生活への適応が難しい」と感じている子どもが多く含まれていることが明らかになっています。

かつて不登校の主なきっかけとして語られてきたのは「いじめ」や「体調不良」でしたが、最近では、子ども自身が「学校のルールがつらい」「集団行動が息苦しい」と感じるケースも増えています。

たとえば、「髪を染められない」「アクセサリーをつけられない」「服装が厳しくチェックされる」など、子どもにとっての“納得しづらいルール”が、学校との距離を感じさせる要因となることがあります。

社会に出るとき、多くの人は法律・ルール・マナーの中で生きています。学校という集団の中でも、規則に従うことや集団行動に参加することは、“社会性”の一つの学びです。では、なぜ学校のルールや集団行動が合わないと感じる子どもがいるのか。そしてそれが不登校にどうつながるのか。背景と支援の方向性を整理します。

不登校が抱える大きな課題──“規則と個性”のギャップが生む居場所の喪失

学校には多くのルールと集団の仕組みがあります。制服・髪型・アクセサリー・遅刻・授業参画・休み時間での行動など、集団で過ごすためのルールが設定されています。これらは、集団生活を円滑にし、社会性を育むための基盤です。
しかし、その一方で、ルールが 「なぜ必要か」 が子どもにとって見えづらかったり、子どもの個性・気質・背景とマッチしなかったりすることで、次のような状況が起きることがあります:

・規則を守れない・守りづらいと感じている
・「周りと同じようにしなければ」と無理をして疲れる
・「なんでアクセサリーをつけちゃダメなの?」と納得できない気持ちが蓄積
・集団行動で“合わせること”が苦痛だと感じてしまう
・自分の考え・スタイルが尊重されていないと感じる

こうしたギャップは、子どもが「自分はこの場に合っていない」「ここでは自分らしくいられない」と感じるきっかけになることが少なくありません。
その結果、学校という場に“居場所”を見いだせず、登校をためらう・教室から距離を置きたくなる子どもが増えています。
「規則を守れないのは性格の問題」「集団に合わせられないなら頑張らせるべきだ」という単純な対応では、こうした子どもの苦しさを十分には理解できないため、課題は見過ごされがちです。

支援の鍵は“ルール・集団を問い直すこと”──個性と集団をつなぐ環境づくり

学校のルールや集団行動に馴染めない子どもには、まず「ルールだから守る」「集団だからこうしなさい」というアプローチだけでは限界があります。大切なのは、ルール・集団の意味をともに考え、子どもが“納得できる”仕組みをつくることです。
具体的には次のような支援が考えられます。

⚫︎ルールの目的を共有する:なぜ制服があるのか、なぜ髪型を定めるのか、なぜアクセサリーが制限されるのか、子ども・教職員・保護者で対話する機会を設け、「この学校で大切にしたいこと」を言葉にします。
⚫︎選択肢・許容範囲を広げる:例えば、アクセサリー・髪型・服装などで「許可できる範囲」を検討する、あるいは例外を設けることで、子どもが“守れない=自分がダメ”と思わなくてすむ配慮をします。
⚫︎集団行動への移行を段階化する:全校集会・大きな行事・役割参加などを一気に求めず、子どもが少人数・安定した環境から始められるようにします。
⚫︎個性を活かす場を設ける:ルールや集団の中でも、子ども一人ひとりの意見・スタイル・役割を尊重されるような活動(選択授業・クラブ活動・プロジェクト)をつくることで、「自分もここで価値がある」と感じる経験を増やします.
⚫︎保護者・学校・専門機関の連携:子どもの“馴染めなさ”を早期に察知し、保護者が子どもの声を聞き、学校が無理のない環境を設け、専門機関が相談・支援を行うというチーム体制をつくります。

このようなアプローチにより、子どもが「規則だから守る」「集団だから合わせる」ではなく、
「この学校のこのルール・この集団の中で、自分はどう関わりたいか」 を考えられるようになると、学校に対する距離感が変わってきます。

未来を見据えて──“規則と個性”のバランスが見える学校へ

学校におけるルールや集団行動は、確かに“社会に出たとき”も求められる力を育てるためのものです。
しかし、子どもが「納得できない」「自分には合わない」と感じてしまうと、それが“学校を去る理由”となることもあります。
文部科学省が提唱する「誰一人取り残されない学びの保障」では、子ども一人ひとりの背景を踏まえた支援が求められています。

この文脈において、学校は「ルールを押し付ける場」から、「ルールと個性をつなぐ場」へと変わる可能性を秘めています。
これからの支援や学校づくりでは、

・ルールの意味を対話できる場がある
・個性を活かせる関わりがある
・集団の中で「自分らしくいられる」居場所がある

という視点が、ますます重要になると思われます。
「学校のルールや集団行動が合わない」と感じる子どもたちが、安心して“自分らしく学び続ける”ために、支援側も問い続ける必要があります。

ルールやマナーをただ守らせるのではなく、「なぜ守るのか」を共に考え、
子ども自身が社会とのつながりを築く力を、学校生活の中で育んでいく。
それが、不登校を防ぎ、子どもが未来に向かって歩める環境づくりの大きな一歩です。

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