1. 小学生までは明るかった子が中学校で急に変わる理由──思春期の心が抱える揺らぎ

行政

小学生までは明るかった子が中学校で急に変わる理由──思春期の心が抱える揺らぎ

2025.11.27(Thu)

近年、文部科学省 の「令和4年度 児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査」によると、小・中学校における不登校児童生徒数が約 29万9千人 に達し、児童・中学生ともに不登校の割合が増加していることが明らかになっています。

特に、小学生時代には明るく活発に見えた子どもが、中学校に入ると急に学校へ行きたくない、行けないと感じるようになる ――このようなケースが少なくありません。思春期特有の心の揺らぎや、学校・人間関係・環境の変化が、子どもの心に静かに影を落とし、「学校不適応」「登校をためらう」「非登校」へとつながることがあります。

本記事では、なぜ小学校までは問題なかった子どもが中学校で変わってしまうのか、その背景と課題、支援の方向性を整理します。

“明るい子”の中学校での変化に潜むリスク

小学校時代に「明るくて皆と仲良し」「授業も特に苦労なく」と見られていた子どもが、中学校に変わると「急に静かになった」「学校を休みがちになった」と母親が驚くケースがあります。
その背景には、以下のような環境・心理・発達の変化があります:

・思春期の身体変化・自己意識の芽生え
 思春期に入ると、体格・声・服装・視線などが変化し、「他人の目」「自分の変化」に敏感になります。これまでの“元気な自分”と変わってしまった気持ちが苦しくなることがあります。

・学校規模・教科・先生・仲間の変化
 小学校と違い中学校では先生が教科ごとに変わり、クラス替えや部活動、複数の友人関係を同時に持つ必要が出てきます。環境の変化に適応しきれない子どもは、違和感・居心地の悪さを感じやすくなります。

・学習レベル・授業形式の変化
 小学校で困りごとがなかった子でも、中学になると授業スピード・宿題量・自学習の要求が増え、「ついていけない」「何をどうすればいいのかわからない」と感じるようになることがあります。

・友人関係・集団のルール・上下関係
 小学校では比較的緩やかだった集団ルールが、中学校ではより明確になり、先輩・後輩関係や暗黙のルールが発生します。これに馴染めないと「自分だけ浮いている」と感じ、孤立感が生まれることがあります。

こうした変化が複合的に作用することで、「ずっと明るかった自分」がいつのまにか「学校に行きたくない自分」へと変わっていくことがあるのです。親から見ると「どうして急に?」という思いになりますが、子ども自身には説明しづらい“揺らぎ”があるのです。

“変化を見逃さず、小さな違和感に寄り添うこと”

このように変化がきっかけとなる場合、支援のポイントは「急に大きな対応をする」ことよりも、 小さな違和感を早く拾い、安心できる環境を整えること にあります。以下のような具体的な対応が有効です。

⚫︎子どもの心の声を丁寧に聞く
 「最近どう感じてる?」「学校でつらいことある?」など、言葉にしづらい思いを汲み取る対話が重要です。小さな不安の芽を早めに捉えることで、登校をためらう段階で手を打てる可能性が高まります。

⚫︎学校環境を少しずつ調整する
 ・教科担任制・部活動・友人関係など、変化の大きい中学校の要素を一部緩やかにする(短時間登校・別室登校・部活休みにするなど)
 ・授業スピードや宿題量を調整できるよう、担任や教務と連携する
 こうした調整により、学校生活の“ぴったり合わない感じ”を和らげやすくなります。

⚫︎家庭・学校・専門機関の連携を強化する
 親が一人で悩むのではなく、学校のスクールカウンセラー・教育相談・地域の支援機関と連携して、子どもを支える体制を整えることが大切です。これにより、「母親だけが苦しい」「子どもだけが変わらなきゃ」という孤立を防ぐことができます。

⚫︎本人の安心できる場・選択肢を増やす
 「教室に行く」「全日参加」という一択ではなく、別の学び方(午後から登校/オンライン併用/友人との少人数活動)を提示することで、子どもが“学校を休む=ダメ”と感じずに済む環境をつくります。

こうした支援によって、「学校に行きたくない」という子どもの心の叫びを、見過ごさずに受け止めることが可能になります。

子どもの“変わる”を否定しない──思春期の揺らぎに寄り添うということ

“明るかった子どもが中学校で急に変わる”という出来事は、親や先生にとって驚きや戸惑いを生みやすいものです。けれど、その変化をすぐに「悪いこと」「問題」と決めつけてしまうと、子どもはますます言葉を閉ざしてしまいます。
思春期は、心も身体も大きく揺れ動く時期です。性格が変わったのではなく、成長の途中で新しい自分と向き合いはじめたサインとも言えます。

文部科学省が掲げる「誰一人取り残されない学びの保障(COCOLOプラン)」でも、子どもの背景や心の変化に寄り添い、多様な学び方を認めていく姿勢が重視されています。

“前と違う”という変化は、良くも悪くも周囲に影響を与えます。
しかし、その変化を恐れるよりも、
「そういう時期もあるよね」「あなたはあなたで大丈夫だよ」
と受け止めてもらえることが、子どもにとって何よりの安心につながるはずです。

周りが慌てず、オーバーに反応せず、落ち着いて関わることで、子ども自身の心も少しずつ整っていきます。
大切なのは、子どもが“変わった自分”を否定されずに済むこと。

その変化を責めるのではなく、
「あなたはそのままでいい」
と認めてあげられる大人がそばにいることこそ、
中学生という大きな揺らぎの時期を支える力になるのだと思います。

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