1. 母子家庭・父子家庭が抱える負担と不登校──支援が届きにくい家庭の現実

行政

母子家庭・父子家庭が抱える負担と不登校──支援が届きにくい家庭の現実

2025.11.27(Thu)

文部科学省の令和5年度「児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査」によると、義務教育段階における不登校児童・生徒数が約 34万6,000人 に上り、11年連続の増加を記録しています。

また、同調査では、長期欠席状態にある児童・生徒のうち、学校内外の専門相談・指導を受けていない割合も高く、支援の届かない状況が浮かび上がっています。

一方、母子家庭・父子家庭(いわゆるひとり親家庭)に関する統計を見ると、令和3年度の全国ひとり親世帯等調査によれば、母子世帯が約 120万世帯、父子世帯が約 15万世帯 とされています。

ひとり親家庭では、経済的困窮・就労負担・子育てのワンオペ支援などが多く、家庭内リソースが限られやすいため、子どもの “学校に行けない・行きづらい” 状態が生まれたときに、 相談・支援にたどり着きづらい という現実があります。
母子家庭、父子家庭の子どもが不登校になるとき、そこには「家庭の形」が自動的に問題というわけではなく、むしろ、支援の網の目が届きにくい構造的な背景があることを忘れてはいけません。

ひとり親家庭における“見えにくい負担”

ひとり親家庭(母子・父子)は、子どもが学校に通えなくなったとき、複数のハードルを同時に抱えることがあります。

① 経済的・時間的余裕の制約
ひとり親家庭では、就労時間が長く、夜間や休日も仕事に追われるケースがあります。
子どもが朝起きられない、学校行きたくない、教室に入れないという状況でも、
「仕事を休めない」「預け先がない」という現実が立ちはだかります。
このため、子どもが学校に行きづらい状態になっても、家庭側が相談窓口や支援機関にアクセスする余裕を持てないことがあります。

② 相談・支援を受けにくい心理的障壁
ひとり親家庭は、周囲から「大丈夫?」「どうして?」と余計な視線を受けやすい環境にあります。
子どもが不登校になったとき、「私の育て方が悪いのでは」「またお金がかかるのでは」という罪悪感、恥ずかしさ、相談できない心理が働くことがあります。
結果として、学校・教育委員会・福祉・地域支援のどこに相談すればいいか分からず、支援が“届かないまま”時間だけ過ぎてしまうケースが少なくありません。

③ 支援制度の「知られていない・受けにくい」構造
母子・父子家庭の子どもに対する支援制度(子ども家庭庁・市町村のひとり親支援・教育支援など)は存在しますが、複数の制度を横断的に知ることが難しく、手続きも多岐にわたることがあります。そのため、子どもが不登校になったとき、**「どこにまず相談すればいいのか」**が分からないという情報の壁が生まれます。
文部科学省の調査でも、専門相談・指導を受けていない児童・生徒の数が多く報告されています。

こうした構造的な壁により、ひとり親家庭では、子どもの不登校の兆候が見えても、
「気づいてはいるけれど動けない」という状況が起きやすいのです。

ひとり親家庭が頼れる仕組みと“つながり”の強化

▶︎専門相談窓口・地域支援の活用
こども家庭庁「全国ひとり親世帯等調査」の知見をもとに、母子・父子家庭向け相談窓口・ワンストップサービスを活用する。
教育委員会・市町村の「教育支援センター」「適応指導教室」など、学校外支援の入口を把握しておく。文部科学省も「学校に来られない児童生徒には教育支援センターを活用すべき」と通知しています。
ひとり親世帯支援団体(母子家庭の会、父子家庭支援ネットワークなど)との連携。家庭の“相談先ネットワーク”を広げることが安心につながります。

▶︎家庭と学校・地域が「連携プレー」を行う
ひとり親家庭では、家庭での役割が多く、子どもの学校状況を細かくフォローする余裕が少ないことがあります。
そこで、担任・スクールカウンセラー・教育支援担当と定期的に情報共有をすることや、学校・地域・家庭の“タッグ体制”を作るという仕組みが有効です。
例えば、家庭が「相談日には仕事を抜けられないので〇月〇日にスケジュールを調整してほしい」と予め学校と共有する、といった実務的な工夫も効果的です。

▶︎子ども自身と「相談・休める場」をつくる
不登校の子どもは、家庭に頼ることに抵抗を感じるケースもあります。
ひとり親家庭では、親自身の緊張や疲れが子どもに伝わりやすいため、子どもが“自分だけの安心できる相談チャネル”を持つ(学校相談窓口・オンライン相談・フリースクール)や子どもが“休んでいい”というメッセージを家庭から得る(「今日は無理しなくていいよ」「ゆっくりでいいよ」)
こうした環境が、子どもが学校を離れても前を向く力を育てます。

家庭形態ではなく「支援の網」が子どもを守る

母子家庭・父子家庭という家庭形態そのものが不登校の原因になるわけではありません。
しかし、ひとり親家庭では、子どもが学校に行きづらくなったときに 「頼る場所が近くに感じられない」「支援にたどり着きにくい」 という構造的なハードルを抱えていることがあります。

文部科学省の調査が示すように、子どもたちの不登校背景には「やる気低下」「不安・抑うつ」「生活リズムの乱れ」など、見えにくい心の負担が多数存在しています。

この心の負担に加えて、支援が届かない環境があると、子どもは“取り残された”と感じやすくなります。
これからの支援・教育環境づくりでは、
・ひとり親家庭に対する相談窓口・支援機関のアクセスをもっと広く・使いやすくする
・学校・地域・支援団体が連携して、子ども・保護者双方をサポートする
・子どもが「休んでいい」「相談していい」という安心を持てる環境をつくる
という視点がますます重要です。

家庭の形にかかわらず、子どもが「自分には居場所がある」と感じられ、保護者が「ひとりでは抱えないでいい」と思える。そんな社会が、不登校を減らし、子どもたちが安心して学び続けられる未来を開く鍵となるでしょう。

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